ソフトウェアやシステムを開発するにあたって、知っておくべき開発方法のひとつに「スクラッチ開発」があります。転職を機にこれから開発に携わる方は、とくに理解を深めておくことが重要です。
そこで今回は、スクラッチ開発の概要からメリット・デメリット、向いているケース・向いていないケースまでご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
スクラッチ開発とは?
スクラッチ開発とは、既存のコードやテンプレート(パッケージ)などを使用せず、ソフトウェアやシステムを一から開発する方法のことです。ゼロからすべての要素を設計・実装するのが特徴です。
スクラッチ開発は、特定の要件やニーズに完全に合致するソリューションを作成するために用いられますが、時間とリソースが多くかかることがあります。
クラッチ開発のメリットと具体的な活用ケース
スクラッチ開発のメリットと具体的な活用ケースについて、以下で詳しく解説します。
スクラッチ開発のメリット
スクラッチ開発のメリットは、主に以下の8つです。
1.完全なカスタマイズ
開発者はシステムのすべての側面を制御できるため、特定のビジネス要件や技術的要件に完全に適合するソリューションを作成できます。
2.高い柔軟性
開発プロセスにおいて柔軟に変更や調整が可能です。新しい要件が発生した場合でも、コードベースを自由に変更できます。
3.独自の機能開発
市場に存在しない独自の機能や特長を実装することができ、競争力を高めることができます。
4.品質管理の向上
コードの品質、セキュリティ、およびパフォーマンスを厳密に管理でき、依存する外部のライブラリやフレームワークに起因する問題を回避できます。
5.技術的制約の回避
既存のプラットフォームやフレームワークの制約に縛られることなく、最新の技術や独自のアルゴリズムを自由に採用できます。
6.将来的な拡張性
最初から設計に拡張性を持たせることで、将来的な機能追加やスケールアップが容易になります。
7.知的財産の保有
自社開発のコードは自社の知的財産となり、ライセンス料や利用制限の問題が発生しません。
8.競争優位性
他社が容易に模倣できない独自のシステムやプロセスを構築することで、競争優位性を確保できます。
具体的な活用ケース
スクラッチ開発の具体的な活用ケースは以下のとおりです。
金融機関で活用
高いセキュリティ要件や独自の業務プロセスに対応するため、スクラッチ開発を選ぶことがあります。
大規模なエンタープライズシステムで活用
複雑なビジネスロジックや大量のデータ処理が必要な場合、汎用的なソフトウェアでは対応できないため、スクラッチ開発を活用します。
スタートアップで活用
独自のアイデアやビジネスモデルを迅速に実現し、市場に投入するためにスクラッチ開発を活用することがあります。
スクラッチ開発のデメリットと具体的なケース
スクラッチ開発には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。以下で詳しく解説します。
スクラッチ開発のデメリット
スクラッチ開発のメリットは、主に以下の8つです。
1.高コスト
ゼロから開発するため、初期投資が非常に大きくなる可能性があります。とくに人件費や開発ツール・インフラなどにかかる費用が高くつく傾向があります。
2.長い開発期間
既存のソリューションを利用する場合に比べて、開発に時間がかかる傾向があります。市場投入までの時間が延びるため、競争上の不利になることもあるでしょう。
3.リソースの確保
スクラッチ開発を行うには専門的なスキルや知識を持った開発者が必要ですが、場合によっては優秀な人材の確保が難しいことがあります。これにより、開発プロジェクトが遅延することもあるでしょう。
4.リスクの増大
新しいシステムを一から設計・開発する際には、多くの技術的な課題や不確実性が伴います。これにより、プロジェクトの失敗リスクが高まることがあります。
5.メンテナンスの負担
独自のコードベースを維持するためには、継続的なメンテナンスが必要です。バグ修正や機能追加、セキュリティアップデートなど、長期的なリソース投入が求められます。
6.スケーラビリティの問題
スクラッチで開発されたシステムが必ずしも効率的にスケールするとは限りません。設計段階でスケーラビリティを十分に考慮しなければ、大規模な負荷に耐えられない可能性があります。
7.互換性の問題
ほかのシステムやソフトウェアとの互換性を確保するのが難しい場合があります。既存の標準やプロトコルに対応するための追加開発が必要になることもあるでしょう。
8.技術の陳腐化
技術の進歩は非常に早いため、スクラッチ開発したシステムがすぐに時代遅れになる可能性があります。最新の技術トレンドを追い続けるためのコストが必要になるでしょう。
具体的なケース
スクラッチ開発の具体的な活用ケースと、それに伴うデメリットは以下のとおりです。
スタートアップ
スタートアップの場合、リソースが限られているため、スクラッチ開発に時間とコストをかけることが難しく、市場投入が遅れると競争力を失うリスクがあります。
中小企業
中小企業において専門的な技術者を雇用するための資金が不足している場合、スクラッチ開発の負担が大きくなる可能性があります。
スクラッチ開発に向いているケース・向いていないケース
スクラッチ開発が向いているケースと向いていないケースについて、それぞれの特徴を具体的に解説します。
スクラッチ開発に向いているケース
スクラッチ開発に向いているケースは以下のとおりです。
1.高度にカスタマイズされたシステムを開発する場合
特定のビジネスプロセスや業務フローに合わせて、完全にカスタマイズされたシステムが必要な場合、スクラッチ開発が向いています。とくに、既存のソフトウェアでは対応できない特別な機能や要件がある場合に有効です。
2.ユニークなユーザーエクスペリエンスが求められる場合
独自のユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスが求められるプロジェクトには、スクラッチ開発が向いています。市場に出回っている一般的なUIフレームワークでは満たせないデザインやインタラクションを実現できるでしょう。
3.高いパフォーマンスを求められている場合
高度なパフォーマンスが必要なシステム開発、および特定の技術スタックやアーキテクチャでのみ達成できるパフォーマンス目標がある場合にもスクラッチ開発が向いています。
4.高度なセキュリティ要件がある場合
非常に高いセキュリティが求められるシステムを開発する場合、たとえば、金融機関や医療機関など、データの機密性やシステムの堅牢性が極めて重要な場合にもスクラッチ開発が向いているでしょう。
5.競争優位性を求めるプロジェクトの場合
市場での競争優位性を得るために、他社にはない独自の機能やサービスを提供する必要がある場合も、スクラッチ開発が向いています。
6.長期的な投資が可能な企業の場合
リソースや予算に余裕があり、長期的な視点でシステムの構築・保守に投資できる企業やプロジェクトに関しても、スクラッチ開発が向いているでしょう。
スクラッチ開発に向いていないケース
スクラッチ開発に向いていないケースは以下のとおりです。
1.予算が限られているプロジェクトの場合
開発にかけられるリソースや予算が限られている場合は、スクラッチ開発は避けたほうがよいでしょう。コスト効率が重要な場合には、既存のソリューションやオープンソースソフトウェアの利用が適しています。
2.迅速な市場投入が必要なプロジェクトの場合
市場投入のスピードが競争上の重要な要素となる場合も、スクラッチ開発は向いていません。
スクラッチ開発は通常、開発期間が長くなるため、迅速なリリースが求められる場合には向いていないのです。
3.既存のソリューションで十分な場合
スクラッチ開発が向いていないケースには、既存の市販ソフトウェアやオープンソースプロジェクトで要件を満たせる場合も挙げられます。再発明するよりも既存のツールをカスタマイズする方が効率的です。
4.メンテナンスリソースが限られている場合
継続的なメンテナンスやサポートを行うためのリソースが不足している場合は、既存のソリューションを利用することで、ベンダーのサポートやコミュニティの助けを得られます。そのため、スクラッチ開発は向いていないでしょう。
5.技術的スキルが不足している場合
スクラッチ開発には高度な専門知識が必要であり、スキル不足がプロジェクトの成功を妨げる可能性があります。そのため、開発チームに必要な技術的スキルや経験が不足している場合も向いていないといえます。
具体的な判断ポイント
スクラッチ開発が向いているか否かを判断する際のポイントは以下のとおりです。
要件の複雑性
要件が複雑で独自性が高い場合はスクラッチ開発が向いていますが、標準的な機能で十分な場合は既存のソリューションが適しています。
開発スケジュール
開発スケジュールに余裕がある場合はスクラッチ開発の活用も可能ですが、短期間でのリリースが必要な場合は既存のソリューションを選択するほうが賢明です。
予算とリソース
十分な予算とリソースがある場合はスクラッチ開発が実現可能ですが、制約がある場合は既存のソリューションを活用するほうが現実的です。
将来的なメンテナンス
長期的にメンテナンスを行うための計画とリソースがある場合はスクラッチ開発が適していますが、そうでない場合はほかの方法を検討する必要があります。
これらのポイントを総合的に考慮し、プロジェクトの特性やビジネス目標に最も適したアプローチを選ぶことが重要です。
まとめ
既存のコードやテンプレート(パッケージ)などを使用せず、ソフトウェアやシステムを一から開発す「スクラッチ開発」。ビジネス要件や技術的要件に完全に適合するソリューションを作成できたり、独自の機能や特長を実装できたりと、さまざまなメリットがありますが、すべての開発シーンに適応するわけではありません。場合によっては既存のソリューションを選択したりほかの方法を検討したりする必要もあるので、今回ご紹介したポイントを参考にしながら判断するようにしましょう。
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