アメリカ生まれの造語「MarTech（マーテック）」が、マーケティングに注力する企業の間で注目を集めています。しかし、中にはどのような意味なのか、具体的にご存じない方もいるでしょう。

そこで今回は、MarTechの概要や注目されている背景、領域、トレンド、課題などについてご紹介します。あわせて、MarTech領域で活躍する人材もまとめているので、エンジニアへの転職を検討している方はぜひチェックしてみてください。

MarTech（マーテック）とは？

MarTech（マーテック）とは、マーケティング（Marketing）とテクノロジー（Technology）を組み合わせた造語です。マーケティング活動を効率化・最適化または強化するために使用される技術やツールのことを指します。

MarTechは、デジタル技術の進展とともに、マーケティング業界で急速に発展してきた分野です。広告やデータ分析、コンテンツ管理、オートメーション、顧客関係管理（CRM）、ソーシャルメディアの管理など、さまざまなマーケティング活動を支援するために利用されます。

MarTech（マーテック）が注目されている背景

MarTechが注目されている主な背景は、以下の2つです。

1.データ主導のマーケティングへのシフト

企業が消費者の行動や嗜好をデータとして収集し分析することで、よりパーソナライズされたマーケティング戦略を展開できるようになりました。

マーケティング活動においては、ターゲットオーディエンスのニーズを深く理解することが求められます。MarTechツールは、大量のデータを迅速に分析してインサイトを得ることを可能にし、効率的な広告配信やコンテンツの最適化を支援します。
データドリブン（データに基づく）な意思決定が企業競争力を高めるため、MarTechはますます重要な役割を果たしています。

2.顧客体験（CX）の重要性の増加

現代の消費者は、パーソナライズされたシームレスで一貫性のある体験を求めています。そのため、企業は顧客体験を向上させるために、マーケティング活動を高度に自動化し、最適化する必要があります。

MarTechは、キャンペーンの効果をリアルタイムで測定し、最適なタイミングで適切なメッセージを届けることを可能にします。これにより、顧客との関係が強化され、エンゲージメントやロイヤルティが向上します。

このような顧客中心のアプローチが企業成功の鍵となったことで、MarTechの需要が急増しています。

MarTech（マーテック）の6つの領域

MarTechは、以下の6つの主要な領域に分類されます。これらは、マーケティング活動を支援するためのツールや技術を集中的に活用する分野です。

1.広告技術（AdTech）

デジタル広告キャンペーンを管理・最適化・配信するためのツールやプラットフォームです。広告ターゲティング、パフォーマンス測定、広告クリエイティブの管理などが含まれます。

例：Google Ads、Facebook Ads、DSP（Demand Side Platform）　など

2.データ・アナリティクス

顧客データやキャンペーンデータを収集し、分析してインサイトを得るための技術です。これにより、マーケティング戦略をデータに基づいて最適化し、効果を測定することができます。

例：Google Analytics、Tableau、Power BI　など

3.コンテンツ管理（CMS）

Webサイトやブログのコンテンツを管理するシステムで、コンテンツの作成・編集・公開を簡素化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させます。

例：WordPress、Drupal、Sitecore　など

4.顧客関係管理（CRM）

顧客との関係を管理し、パーソナライズされたマーケティング活動を支援するツールです。顧客データの集約、ターゲティング、セグメンテーションなどが行われます。

例：Salesforce、HubSpot、Zoho CRM　など

5.マーケティングオートメーション

マーケティングキャンペーンのプロセスを自動化する技術で、リードジェネレーション、メールマーケティング、リードナーチャリング、カスタマーエンゲージメントなどを効率化します。

例：Marketo、HubSpot、Pardot　など

6.ソーシャルメディア管理

ソーシャルメディアプラットフォーム上での投稿、スケジュール、モニタリング、分析を支援するツールです。これにより、企業はソーシャルメディアでのブランド管理を強化し、顧客とのエンゲージメントを高めることができます。

例：Hootsuite、Sprout Social、Buffer　など

これらの6つの領域は、企業がデジタルマーケティングを効率的に展開し、効果的にターゲット市場にアプローチするために不可欠な技術とツール群を提供します。

MarTech（マーテック）のトレンド

MarTechのトレンドは急速に進化しており、企業がマーケティング活動をより効果的に・効率的に行うための新しい技術やアプローチが登場しています。現在注目されている主なMarTechトレンドは以下のとおりです。

1.人工知能（AI）と機械学習の活用

人工知能（AI）と機械学習は、マーケティングの最適化において大きな役割を果たしています。これらの技術を活用することで、データ解析や予測分析、パーソナライズの精度が向上し、マーケティング施策の効果を最大化できます。
たとえば、AIを活用したチャットボットやリコメンデーションエンジン、ターゲティング広告などが増加しています。

2.パーソナライズとカスタマージャーニーの最適化

顧客の個別ニーズに基づいたパーソナライズが、消費者の期待に応える重要な要素になっています。顧客の行動データや履歴を活用して、個別にカスタマイズされたメッセージやオファーをリアルタイムで提供することが、競争優位性を高めます。
この点から、マーケティングオートメーションツールを使ってより深いレベルで顧客のカスタマージャーニーを最適化する動きが広がっています。

3.統合されたデータプラットフォーム

企業がさまざまなマーケティングチャネルで収集したデータを統合し、シームレスに分析するためのプラットフォームが注目されています。これにより、キャンペーン効果を全体で把握し、マーケティング施策をより戦略的に調整できるようになります。
具体的には、CDP（カスタマーデータプラットフォーム）やDMP（データマネジメントプラットフォーム）など、データ統合の技術が重要視されています。

4.音声検索と音声アシスタントの活用

音声検索の利用が増加しており、それに伴い音声コンテンツの作成や音声アシスタント（例：Amazon Alexa、Google Assistant）向けのマーケティング活動が注目されています。
企業は、音声インターフェースを活用して顧客と接続し、プロダクトの提案やサービスの向上を図る新たな手法を模索しています。

5.エクスペリエンス主導のマーケティング

単なる製品やサービスのプロモーションにとどまらず、顧客が体験する全体的な価値や感情に焦点を当てるエクスペリエンス主導のアプローチが進んでいます。これは、顧客エンゲージメントの向上を目指すマーケティング戦略の一環として、より直感的で感動的な体験を提供することを重視しています。

6.インフルエンサーとユーザー生成コンテンツ（UGC）の強化

インフルエンサーやユーザー生成コンテンツ（UGC）は、消費者の信頼を得る手段としてますます重要な役割を果たしています。
この背景から、企業はインフルエンサーとの協業やUGCの活用を通じてブランドの認知度を高め、消費者との関係を強化しています。これらの手法は、とくに若年層のターゲット層に有効とされています。

7.プライバシーとデータ保護への対応

消費者のプライバシー保護に対する関心が高まり、データ保護規制（例：GDPR、CCPA）の強化に伴い、企業はより安全なデータ収集と管理方法を採用しています。これにより、マーケティング活動における透明性や信頼性が高まり、消費者の個人情報を適切に扱うことが求められています。

8.コンテンツのインタラクティブ化

動画やインタラクティブコンテンツ（たとえば、クイズや調査、インタラクティブな広告）は、消費者のエンゲージメントを促進する手段として増加しています。これらのコンテンツは、ユーザーの関心を引き、より深いコミュニケーションを築くために活用されています。

これらのトレンドはMarTechの進化に伴い、企業が競争力を保ち、効果的なマーケティング戦略を実行するために必要な要素となっています。

MarTech（マーテック）の課題

MarTechを活用する企業が直面する課題には、以下のような点が挙げられます。

1.ツールの統合とシステム間の連携

MarTechのツールは多岐にわたり、広告やデータ分析、CRM、コンテンツ管理、マーケティングオートメーションなど、複数の異なるシステムを利用することが一般的です。
しかし、これらのツールを効果的に統合し、データを一元的に管理することは難しい場合があります。ツール間でデータが断片化してしまうと顧客体験の一貫性が欠け、マーケティング施策の効果が十分に発揮できなくなる恐れがあります。

2.データの管理と品質の確保

MarTechでは大量のデータを扱いますが、そのデータの品質を保つことは大きな課題です。データの不整合や欠損、重複などがあると、分析結果が誤って解釈される可能性があります。
とくに、顧客データの精度と整合性が求められる場面では、データのクリーンアップや正確なデータ入力が欠かせません。また、データのプライバシー保護やセキュリティ対策も重要です。

3.技術の複雑さとスキル不足

MarTechのツールを使用するには高度な技術を必要とする場合が多く、専門的なスキルを持った人材の確保が課題です。とくに、AIや機械学習、データ分析、オートメーションなどの分野で専門知識が求められ、これらの技術を適切に運用できる人材を確保しなければなりません。
また、企業は新しい技術に追いつくためのトレーニングを行ったり、リソースを投資したりする必要があるでしょう。

4.プライバシー規制とコンプライアンス

データプライバシーに関する規制（GDPR、CCPAなど）の強化により、企業はデータの収集・利用・保管に関して厳格なルールを守らなければなりません。これにより、マーケティング活動におけるデータ活用が制限されることがあり、とくに顧客データを活用したパーソナライズやターゲティングに影響が出る可能性があります。
適切なコンプライアンスを維持するためには、データの取り扱いや利用方法に関する透明性と正確さが求められます。

5.ROI（投資対効果）の測定

MarTechツールの導入には高額な初期投資が必要なことが多く、そのROI（投資対効果）を適切に測定することは困難です。とくに、複数のツールを使用している場合、各ツールがどれほど効果を上げているかを明確に評価するのは難しくなります。
結果的に、マーケティング施策の効果を示すための指標が不明確であると、マーケティング戦略の改善に繋がりません。

6.変化するテクノロジーと市場動向

MarTechの分野は急速に進化しており、新しい技術やツールが次々と登場します。そのため、企業は常に最新の技術動向に追いつき、既存のツールを更新または置き換える必要があります。
これにより、技術選定やシステムの更新にかかるコストや労力が増加し、企業のリソースに負担をかけることがあります。

7.顧客体験の一貫性の維持

複数のチャネルやプラットフォームでマーケティング活動を行う中で、顧客に対して一貫した体験を提供することは難しい場合があります。とくに、オンラインとオフライン、あるいはソーシャルメディアと直接販売のチャネル間での整合性が取れていないと、顧客のエクスペリエンスに不満が生じる可能性があります。これを解決するためには、統合的なアプローチとリアルタイムでの情報共有が重要です。

これらの課題に対応するためには、戦略的なプランニング、適切なツールの選定、データ管理の強化、スタッフのスキル向上、そして規制に対する準拠が求められます。

MarTech（マーテック）領域で活躍する人材

MarTech領域で活躍する人材は、テクノロジーとマーケティングの両方の知識を持ち、企業のマーケティング活動を支えるために重要な役割を果たします。
以下は、MarTech領域でとくに求められる人材の職種とスキルセットです。

1.データアナリスト/データサイエンティスト

データアナリストやデータサイエンティストは、顧客データやマーケティングキャンペーンから得られるデータを分析し、インサイトを抽出してマーケティング戦略をサポートします。

具体的な役割としては、以下のスキルが求められます。

・データ解析（SQL、Python、Rなどのプログラミング言語）
・機械学習やAIを活用した予測分析
・データ可視化ツール（Tableau、Power BI など）の使用経験
・ABテストや効果測定の実施

なお、データサイエンティストについては以下の記事で詳しくご紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
データサイエンティストとは？需要が高まっている理由から必要なスキルまでご紹介

2.マーケティングオートメーションエンジニア

マーケティングオートメーションツール（例：HubSpot、Marketo、Salesforce Marketing Cloudなど）を活用して、顧客との接点を自動化する役割を担います。

具体的なスキルセットには以下が挙げられます。

・マーケティングオートメーションツールの運用・設定・カスタマイズ
・CRMシステムとの連携経験
・キャンペーン設計（リードジェネレーション、ナーチャリング）
・APIやインテグレーション技術を使ったツール間連携

3.ウェブ開発者（フロントエンド/バックエンド）

MarTechツールやプラットフォームをカスタマイズしたり、独自のマーケティングシステムを開発したりする役割です。

具体的には、以下の技術が重要となります。

・フロントエンド技術（HTML、CSS、JavaScript、React など）
・バックエンド技術（Node.js、Python、PHP、Ruby、Java など）
・データベース（MySQL、PostgreSQL、NoSQL など）の知識
・API開発やシステムインテグレーション

4.UX/UIデザイナー

MarTech領域では、マーケティングキャンペーンやプラットフォームのユーザーエクスペリエンス（UX）を改善するために、UX/UIデザイナーが重要な役割を果たします。

求められるスキルは以下のとおりです。

・ユーザーリサーチ（ユーザビリティテスト、インタビュー、アンケート）
・プロトタイピングツール（Figma、Adobe XD、Sketch など）の使用
・インタラクションデザインや視覚デザイン
・レスポンシブデザインやアクセシビリティに関する知識

5.デジタルマーケティングエンジニア

デジタルマーケティングの専門知識とITスキルを兼ね備え、オンライン広告やSEO、コンテンツマーケティングなどを支える技術的な役割を担います。

必要なスキルは以下のとおりです。

・Google Analyticsや広告管理ツール（Google Ads、Facebook Ads など）の運用経験
・SEOやSEMに関する技術的な理解
・コンテンツ管理システム（CMS）の操作経験（WordPress、Drupal など）
・A/Bテストやコンバージョン率最適化（CRO）の実践

6.インフラエンジニア/クラウドエンジニア

マーケティング活動に必要なシステム基盤の構築・運用を担当するIT人材です。クラウドベースのMarTechツールが多く使用されているため、クラウドインフラの知識が求められます。

・クラウドプラットフォーム（AWS、Google Cloud、Microsoft Azure）の使用経験
・インフラの自動化（Docker、Kubernetes、CI/CDパイプラインの構築）
・セキュリティやデータバックアップに関する知識
・ネットワークやシステム監視のスキル

なお、インフラエンジニアについては以下の記事で詳しくご紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
インフラエンジニアになるためには？目指す上でやるべきことを一挙ご紹介

7.プロジェクトマネージャー

MarTechのプロジェクトをリードし、異なる技術やマーケティングチームをつなげる役割です。

必要なスキルには以下が挙げられます。

・プロジェクトマネジメントツール（Jira、Trelloなど）の使用経験
・アジャイルやウォーターフォールなど、プロジェクト管理手法の理解
・コミュニケーションスキルとクロスファンクショナルチームのリーダーシップ

なお、プロジェクトマネージャーについては以下の記事で詳しくご紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
プロジェクトマネージャーとは？主な仕事内容と求められるスキル、キャリアパスの例

8.マーケティング戦略担当者（技術的バックグラウンド）

マーケティング戦略の立案と技術面の調整を行うハイブリッド型人材で、マーケティングの目標達成に向けた技術的なアプローチを指導します。

必要なスキルには以下が挙げられます。

・マーケティングの知識とテクノロジーの理解
・データ解析を通じた戦略的意思決定
・ツールの選定と導入支援

MarTech領域で成功するためには、これらの人材が協力し、テクノロジーを活用してマーケティングの効果を最大化することが重要です。とくに、技術力とマーケティング戦略の知識を兼ね備えたハイブリッド型人材が今後ますます重宝されるでしょう。

まとめ

MarTech（マーテック）は、マーケティング活動を効率化・最適化または強化するために必要な技術やツールです。データ主導のマーケティングへのシフトや顧客体験（CX）の重要性の増加などにより、今後ますます注目される可能性があります。
そんなMarTech領域では、データアナリストやウェブ開発者、インフラエンジニアなどの職種が活躍します。そのため、これらの職種への転職を希望している場合は、MarTechへの理解を深めておくことが重要でしょう。今回の記事でご紹介したポイントは、ぜひ押さえておいてください。

私どもTechClipsエージェントは、 ITエンジニアやITコンサルタントを目指す皆さまのキャリアプランの相談をはじめとした、 無料の転職支援サービスです。人生の目標やキャリアの方向性を整理し、一緒に考えていく作業に多くの時間を割いています。もしひとりで自分自身のキャリアや転職活動の進め方に悩んでいるのであれば、この機会にぜひご相談ください。

簡単60秒

無料 転職支援サービス申し込み