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CivicTech

投稿日: 2025/02/26

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市民がテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指す「CivicTech(シビックテック)」は、エンジニアやデータサイエンティストなどのITスキルを持つ人材が活躍できる領域です。
ただ、具体的にどのようなことをするのか、イメージできていない方もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、CivicTechの概要や注目されている背景、日本・海外の主な事例についてご紹介します。あわせて、CivicTech領域で求められる人材も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

CivicTech(シビックテック)とは

CivicTechとは、「市民(Civic)」と「技術(Technology)」を組み合わせた言葉で、市民がテクノロジーを活用して社会課題を解決する活動や取り組みを指します。
行政や企業だけでなく、市民やエンジニア、デザイナーなどが主体となり、オープンデータやデジタル技術を活用して、よりよい社会をつくることを目的としています。

CivicTech(シビックテック)が注目されている背景

CivicTechが注目されている背景には、社会や技術の変化が大きく影響しています。

1.デジタル技術の進化と普及

スマートフォンやクラウド技術の普及により、市民が簡単にデータを取得・発信できるようになりました。また、オープンソース技術の発展により、ボランティアや小規模な団体でもアプリやシステムを開発しやすくなりました。
さらに、AI・IoT・ブロックチェーンなどの技術を活用し、社会課題解決の新たなアプローチも可能となり、こうしたデジタル技術の進化と普及がCivicTechの注目につながっています。

2.オープンデータの推進

日本の「政府統計の総合窓口(e-Stat)」やEUの「European Data Portal」など、政府や自治体が公共データを開放し、誰でも活用できるようになり増田。これにより、交通情報や防災情報、行政サービスなどが可視化され、市民が関与できるようになったことも、CivicTechが注目されている理由のひとつです。

3.社会課題の複雑化と市民の関与の必要性

環境問題、少子高齢化、災害対策など、行政や企業だけでは対応が難しい問題が増加傾向にあります。この背景から、市民が技術を活用して自ら社会を変えていく動きが求められるようになったことで、CivicTechが注目されています。実際に、シビックハック(Civic Hack)と呼ばれる市民主体のハッカソンが増加傾向にあります。

4.行政のDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進

日本では「デジタル庁」が発足し、行政サービスのデジタル化が進んでいます。しかし、行政だけではカバーしきれない領域も多く、CivicTechのような市民の力を活用する流れが加速しています。

5.グローバルなCivicTechの成功事例の増加

CivicTechの成功事例が世界的に増加していることもひとつの要因です。具体的には、市民が道路の破損や問題を行政に報告できるアプリ「FixMyStreet(イギリス)」、紛争や災害の情報をリアルタイムで共有するプラットフォーム「Ushahidi(ケニア)」、地域ごとのCivicTech活動を推進し行政との連携を図る「Code for Japan(日本)」などがあります。
これらの成功事例が世界中で注目されたことで、各国で同様の取り組みが活発化しています。

CivicTech(シビックテック)の事例

CivicTech

CivicTechは国内外でさまざまな分野に活用されており、行政サービスの向上や地域課題の解決に貢献しています。以下で、代表的な事例をご紹介します。

1.日本のCivicTech事例

日本のCivicTech事例として、以下の3つが挙げられます。

①Code for Japan

日本のCivicTechをリードする団体で、行政や地域と連携しながらオープンソース技術を活用したプロジェクトを推進しています。

【主な取り組み】

・「みんなの防災ハッカソン」:防災情報の可視化や災害対応アプリを開発
・「TellMe」:災害時に自治体や市民が情報を共有できるプラットフォーム

②STOP COVID-19 Tokyo

新型コロナウイルス感染症の感染状況を可視化するダッシュボードです。東京都とCivicTechコミュニティが協力し、オープンソースで開発しています。ほかの自治体にも展開され、全国的な取り組みへ発展しています。

③FixMyStreet Japan

道路の破損や不具合を市民がスマートフォンから通報できるアプリです。イギリスのFixMyStreetの日本版として開発され、行政と連携し問題解決を迅速化します。

2.海外のCivicTech事例

海外のCivicTech事例として、以下の4つが挙げられます。

①FixMyStreet(イギリス)

市民が道路の穴や違法駐車、ゴミの不法投棄などを報告し、自治体が対応するシステムです。報告内容はマップ上に可視化され、誰でも確認できます。行政の対応スピードを向上させることで、市民参加の促進を図っています。

②Ushahidi(ケニア)

紛争や災害時に、市民がリアルタイムで被害状況を共有できるプラットフォームです。SMSやインターネットを通じて情報を収集し、地図上に表示します。
日本では東日本大震災時に活用され、避難所情報の共有に貢献しました。

③NYC BigApps(アメリカ)

ニューヨーク市が開催するオープンデータ活用コンテストです。開発者や市民が行政データを活用してアプリやサービス(例:公共交通機関の混雑状況を可視化するアプリ)を開発して競います。

④Taiwan’s g0v(台湾)

台湾の市民参加型CivicTechコミュニティです。政府の透明性向上を目的とし、国家予算や法案の可視化、行政情報の改善に取り組んでいます。具体的には、政府と市民が政策について議論できるオンラインプラットフォーム「vTaiwan」を開発しています。

3.その他のCivicTech分野と事例

その他のCivicTech分野と事例は以下のとおりです。

①防災・災害対策

・Safecast(日本):福島原発事故後に活用された、市民が放射線量を測定・共有するプラットフォーム
・Gotenna(アメリカ): 災害時にインターネットが使えなくても、メッシュネットワークで通信可能にする技術

②教育・学習支援

・Khan Academy(アメリカ):無料のオンライン教育プラットフォーム
・Code for Resilience(グローバル):学生や開発者が防災アプリを開発するプログラム

③交通・都市開発

・OpenStreetMap(グローバル):市民が自由に地図を編集・更新できるオープンデータプロジェクト
・TransitApp(アメリカ):公共交通機関のリアルタイム情報を提供し、最適なルートを案内するアプリ

CivicTech(シビックテック)領域で求められる人材

CivicTech

CivicTech領域では、社会課題をテクノロジーで解決するための人材が求められます。技術力だけでなく、市民や行政と協力するスキルも重要です。

以下で、主に求められる人材像とスキルをご紹介します。

1.CivicTech領域で求められる人材の種類

CivicTech領域では、主に以下の人材が求められます。

①ソフトウェアエンジニア(Web・モバイル開発)

行政や市民向けのアプリ・システム開発を担当します。また、オープンデータを活用したサービスの実装も行います。

例:FixMyStreetのような市民参加型プラットフォームの開発

【求められるスキル】

・フロントエンド:JavaScript(React、Vue.js、Svelteなど)
・バックエンド:Python(Django、Flask)、Ruby(Ruby on Rails)、Node.js
・データベース:MySQL、PostgreSQL、NoSQL(MongoDB など)
・API設計(REST、GraphQL)

②データサイエンティスト / データエンジニア

オープンデータの解析・可視化を行い、市民や行政が活用しやすい形にする役割を担います。また、AI・機械学習を活用し、都市問題の予測や最適化を支援します。

例: 災害時の避難行動データ分析、渋滞予測、犯罪率分析

【求められるスキル】

・データ分析:Python(Pandas、NumPy、Scikit-learn)、R
・データ可視化:Tableau、Power BI、D3.js
・機械学習:TensorFlow、PyTorch
・データベース・ビッグデータ処理:SQL, Spark, Hadoop

なお、データサイエンティストについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。
データサイエンティストとは?需要が高まっている理由から必要なスキルまでご紹介

③UI/UXデザイナー

市民が使いやすいデジタルサービスを設計します。高齢者や障がい者も利用しやすいユーザーインターフェースをデザインするのも、UI/UXデザイナーの役割です。

例:行政サービスのデジタル化(オンライン申請システムなど)

【求められるスキル】

・デザインツール:Figma、Adobe XD、Sketch
・ユーザー調査・プロトタイピング
・アクセシビリティ(WCAG準拠のデザイン)

④DevOpsエンジニア / クラウドエンジニア

CivicTechプロジェクトのインフラを設計・管理します。システムの運用自動化、CI/CDの導入も行います。

例:防災情報システムのクラウド基盤構築

【求められるスキル】

・クラウド:AWS、GCP、Azure
・コンテナ:Docker、Kubernetes
・インフラ自動化:Terraform、Ansible
・監視・ロギング:Prometheus、ELK Stack

なお、クラウドエンジニアについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。
クラウドエンジニアになるためには専門知識・スキルが必須!学習・経験を積んで理想の自分へ

⑤ハッカソンファシリテーター / コミュニティマネージャー

CivicTechコミュニティを運営し、エンジニアや市民をつなげる役割を担います。ハッカソンやアイデアソンを企画し、新たなプロジェクトを生み出します。

例:Code for Japanのような市民ハッカソンの開催

【求められるスキル】

・コミュニティ運営経験
・イベント企画・ファシリテーション
・SNS・マーケティング(情報発信・広報)

2.CivicTech領域のIT人材に求められる共通スキル

上述したCivicTech領域で求められる人材には、以下のスキルが共通して求められます。

①オープンデータの活用

日本の「e-Stat」や世界銀行のデータなど、政府や自治体のオープンデータ(交通情報、防災データ、統計データなど)を理解し、活用できる能力が必要です。

②協業・コミュニケーション力

行政、NPO、市民団体など、ITに詳しくない人と連携するスキルも求められます。具体的には、わかりやすい説明力や異なる立場の人との調整力が必要です。

③アジャイル開発・プロトタイピング

迅速にプロトタイプを作り、市民や行政のフィードバックを反映する柔軟な開発スキルが求められます。たとえば、CivicTechではスピード感のあるアジャイル開発が重要です。

④社会課題への関心と倫理観

データの透明性やプライバシー保護(GDPR、日本の個人情報保護法など)を考慮した開発力が求められます。たとえば、災害時の位置情報データ活用時にはプライバシーに配慮する必要があります。

3.CivicTechに関わる方法

CivicTechに興味がある場合は、以下の方法で接点を持つとよいでしょう。

①コミュニティに参加する:Code for Japan(日本)、g0v(台湾)、Civic Hall(アメリカ)など
②オープンソースプロジェクトに貢献:GitHub上のCivicTechプロジェクトに参加する
③ハッカソンやアイデアソンに参加:CivicTech ChallengeやGovTechカンファレンスに参加する

まとめ

CivicTech(シビックテック)は、技術の発展やオープンデータの推進、社会課題の複雑化などを背景に、市民が主体となって社会をより良くするための手段として注目されています。行政のDX推進と連携することで、今後さらに影響力を持つと考えられます。

そんなCivicTech領域では、単なるプログラミングスキルだけでなく、社会課題の理解やデータ活用力、行政や市民とのコミュニケーション力などが求められます。とくに、エンジニアやデータサイエンティスト、UI/UXデザイナー・クラウドエンジニアなどのITスキルを持つ人材が活躍できる分野なので、興味がある場合はオープンデータ活用やCivicTechコミュニティへの参加から始めるのもよいでしょう。

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