アジャイル開発の用語のひとつに「イテレーション」がありますが、その意味や必要性をご存じでしょうか?
今回は、イテレーションの概要から必要性、導入のメリット・デメリット、成功させるためのポイントまで解説します。ぜひ最後までご覧ください。
イテレーションとは
イテレーション(Iteration)とは、アジャイル開発において「設計→開発→テスト→改善」の工程を、1〜4週間ほどの短いサイクルで繰り返す開発サイクルの単位を指します。
イテレーションの基本プロセスは以下のとおりです。
- 計画(Planning):対象とする機能群をタスク化し優先順位付け
- 設計(Design):アーキテクチャや画面設計など基本設計
- 実装(Implementation):開発フェーズでコードを書き、動くプロダクトを作成
- テスト(Testing):単体+結合+受け入れテスト
- レビュー&改善(Review & Retrospective):検証して次のイテレーションへ反映
ここまでが1サイクルで、再び1からスタートします。
イテレーションとスプリント・XPの違い
イテレーションと類似するものに「スプリント」と「XP(エクストリームプログラミング)」がありますが、これらは別物です。

なぜイテレーションが必要なのか?
では、なぜイテレーションが必要なのでしょうか。
従来のウォーターフォール型では、全工程が終了して初めてテストを行います。そのため、途中で顧客から要望が入った場合、工程を遡って変更を加えなければならず、それに伴い納期遅れや費用の追加が発生することがありました。
一方でアジャイル開発では、イテレーションによって早い段階で実動するプログラムを作り上げられるほか、途中で顧客から要望を受けても迅速に応じることができます。また、短い開発単位で検証と修正を繰り返すことで、大規模な失敗を未然に防ぐことが可能です。
こうした点から、顧客のニーズを踏まえて開発を柔軟に進めながら、リリスクや手戻りの最小化を押さえるという意味でイテレーションは必要といえます。
イテレーション導入のメリット
イテレーションを導入する最大のメリットは、早期にフィードバックを得られることです。
アジャイル開発では、1〜4週間ほどの短いサイクルで開発を進めるため、設計・実装・テスト・レビューを何度も繰り返すことができます。そのたびに顧客やステークホルダーから意見をもらい、素早く改善に取り組めるため、ユーザー満足度の高いプロダクトを効率よく開発することが可能です。
また、頻繁にテストとレビューを行うことで、不具合や設計ミスが早期に発見・修正されるため、全体の品質が向上します。リリース前に想定外のトラブルが起きるリスクを抑えることができるのは、開発現場にとって大きなメリットです。
さらに、短いサイクルで目標を達成していくことで、開発メンバーにとっても達成感やモチベーションを維持しやすいというメリットがあります。進捗が目に見えやすいため、チーム全体の士気も高まりやすくなります。
イテレーション導入のデメリット
一方で、イテレーションの導入にはいくつかのデメリット(注意点)も存在します。
まず、予算や納期の見積りが難しくなる可能性があります。
イテレーションでは開発の進捗に応じて仕様が変更されることがあるため、あらかじめ決められたスケジュール通りに進めるのが難しくなる場合があります。これにより、クライアントとの期待値調整やスケジュール管理には慎重さが求められるでしょう。
また、イテレーションの導入には顧客やステークホルダーの積極的な参加が不可欠です。各イテレーションごとにレビューやフィードバックが必要なため、関係者とのコミュニケーションが頻繁に発生します。関与が薄いと、期待とのズレが生じるリスクもあります。
さらに、短期間で計画・開発・レビューを繰り返すため、プロジェクト管理の負担が増えることもあります。日々の調整や定例ミーティング、進捗確認の機会が多くなり、リーダーやマネージャーには高いスケジュール調整力とファシリテーションスキルが求められます。
イテレーションを成功させるためのポイント

イテレーション開発を効果的に運用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。単に短いサイクルで開発を繰り返すだけでは、チームの負荷が増し、逆に混乱を招くこともあります。
以下では、イテレーションを円滑に進め、プロジェクトの成功につなげるための具体的なポイントを解説します。
1.目的とスコープを明確に設定する
イテレーションの開始前には、「今回のサイクルで何を達成するのか」を明確に定めることが大切です。目的が曖昧なまま開発に入ってしまうと、途中で方向性がぶれたり、不要な手戻りが発生したりする原因になります。タスクや優先順位を明確にしておくことで、チーム全体が同じゴールに向かって動けるようになります。
2.定期的な振り返りを行う
各イテレーションの終了後には、必ず振り返り(レトロスペクティブ)を実施しましょう。その際は「何がうまくいったか」「何が課題だったか」「次回にどう活かすか」といった視点でチーム全体で改善点を共有します。この振り返りを継続的に行うことで、イテレーションごとにプロセスが洗練され、チームとしての成長にもつながります。
3.コミュニケーションを密に保つ
イテレーションの成功には、チームメンバー同士やステークホルダーとの円滑なコミュニケーションが不可欠です。日々のスタンドアップミーティングやチャットツールを活用し、タスクの進捗や課題をこまめに共有することで、問題を早期に発見し対応することができます。
とくにリモートワーク環境では、意識的にコミュニケーションの量と質を高めることが求められます。
4.柔軟性と改善意識を持つ
イテレーションは、完璧な設計を一度で作り上げるための開発スタイルではなく、「少しずつ改善を重ねていく開発スタイル」です。状況やフィードバックに応じて柔軟に対応する姿勢、そして自ら改善点を見つけ出す意識が、イテレーションをより価値あるものにします。変化を恐れず、むしろ積極的に取り入れていく姿勢が求められます。
まとめ
イテレーションとは、アジャイル開発における開発サイクルの単位です。成功させるには、単なる手法の理解にとどまらず、チームで協力し継続的に改善し続ける文化を醸成することが重要です。
IT転職希望者としては、こうした視点や実践経験を持っていることをアピールできると、面接での評価につながります。たとえば、「どのように振り返りを行い、チームの課題を解決したか」といった具体的なエピソードがあると非常に効果的です。ぜひ参考にしてみてください。
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