デジタル技術が急速に進化している今、企業にはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められています。しかし、デジタル技術を正しく理解し、実際の業務変革や事業開発に役立てられる人材は極めて少なく、多くの企業でそうした人材が不足しているのが現状です。
そこで昨今注目を集めているのが「ビジネスアーキテクト」です。DXやビジネス変革の推進を担う専門職であり、キャリアアップにもつながる注目の職種です。
そこで今回は、ビジネスアーキテクトの概要から役割、求められるスキル・知識、キャリアパス例についてご紹介します。戦略的な視点と実行力を兼ね備えたプロフェッショナルを目指したい方は、ぜひご覧ください。
ビジネスアーキテクトとは
ビジネスアーキテクトとは、企業のDXやビジネス変革を推進する重要な役割を担う専門職です。
2022年12月、経済産業省がDXの推進を実現するために必要な人材、および知識・スキル・学習項目を取りまとめた「デジタルスキル標準(DSS)」を発表しました。そこではDXの推進を実現する中心的な人材類型が定義されており、そのなかにビジネスアーキテクトが位置付けられています。
経済産業省は、ビジネスアーキテクトを以下のように定義づけています。
DXの取り組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現にむけたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材
引用:デジタルスキル標準|経済産業省
簡単にいうと、ビジネスアーキテクトは単なるIT技術者ではなく、企業のビジネス戦略とデジタル技術を融合させ、組織全体の最適なビジネスモデルや業務プロセスを設計・調整する人材ということです。
ビジネスアーキテクトの主な役割
ビジネスアーキテクトの役割は多岐にわたりますが、主に以下の3つの領域に分類されます。
1.新規事業・サービスの創出
市場の変化や顧客のニーズを捉え、新たなビジネスモデルやサービスを企画・設計します。戦略的な目的設定を行い、関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的の実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、事業の実現を支援します。
2.既存事業の高度化・改善
既存の事業やビジネスプロセス、製品・サービスの目的を見直し再定義したのち、その目的の実現方法をデジタル技術や新しい業務フローを取り入れながら策定します。関係者をコーディネートすると同時に、関係者間の協働関係の構築をリードしながら、継続的な改善と改革を推進する役割も担います。
3.社内業務の効率化・標準化
社内業務のボトルネックを分析し、業務プロセスの設計やITシステムの導入を通じて効率化を実現します。関係者間の協働関係の構築をリードし、組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。
ビジネスアーキテクトに求められるスキル・知識

ビジネスアーキテクトには、多面的なスキルセットが求められます。以下に、必要なスキルを解説します。
戦略的思考力・ビジネス分析力
ビジネスアーキテクトは広い視野を持ち、経営および事業の成功を長期的に見据える立場です。そのため、企業の中長期的な経営戦略や市場の規模・状況を理解し、ビジネスモデルの設計に活かす能力が求められます。課題の本質を見極め、成長性や競合他社の動向を分析し、論理的に解決策を構築します。
デジタル技術・IT知識の理解
ビジネスアーキテクトは、企業のDX推進に欠かせない「デジタル技術」について深く理解していなければなりません。具体的には、最新のIT技術やクラウドサービス、データ分析手法などを理解し、適切に活用できることが求められます。技術トレンドを押さえることで、ビジネスに最適なソリューションを提案することが可能です。
プロジェクトマネジメント能力
ビジネスアーキテクトは、同時進行する複数の事業を適切に管理し、それぞれの進捗をきちんと把握しなければなりません。また、複数のステークホルダー(経営層、開発チーム、営業、顧客など)を調整し、プロジェクトをスムーズに進行させる必要もあります。さらに、予算内でプロジェクトを成功させることもビジネスアーキテクトの役割です。そのため、リソースの割り振りや進捗状況の確認、潜在リスクの早期発見・対応などを適切に行える能力が求められます。
コミュニケーション能力・ファシリテーション力
ビジネスアーキテクトのコミュニケーション能力は、複数の部署または外部企業が関わる事業において重要です。多様な立場の関係者と円滑に情報共有し、意見が異なる場面でもチームを一つにまとめて合意形成を図る能力が求められます。また、技術的に複雑な内容を経営陣や関係者にわかりやすく説明するためにも、コミュニケーション能力・ファシリテーション力は必須です。
ビジネスアーキテクトのキャリアパスと役職例
ビジネスアーキテクトの代表的なキャリアパスの例は、以下のとおりです。
・ビジネスアナリスト
・デジタル戦略プランナー
・DX推進リーダー
・ITコンサルタント
・プロジェクトマネージャー
ビジネスアーキテクトとして経験を積むことで、経営層と現場をつなぐ橋渡し役としての実力がつき、より経営的な視点で活躍できるようになります。
ビジネスアーキテクトの活躍事例
最後に、ビジネスアーキテクトの活躍事例をご紹介します。
製造業におけるサプライチェーン最適化
ある製造企業では、ビジネスアーキテクトが中心となり、サプライチェーン全体のデジタル化を推進しました。IoTデバイスやビッグデータを活用して在庫管理を最適化し、コスト削減と納期短縮に成功しました。
金融業界のデジタルサービス開発
ある金融機関では、ビジネスアーキテクトがリスク管理システムの刷新と新たなデジタルサービスの企画を担当。データドリブンな意思決定を支援し、顧客満足度の向上につなげました。
小売業のオムニチャネル戦略
ある小売チェーンでは、オンライン・オフラインを統合した販売戦略をビジネスアーキテクトが設計。顧客体験を向上させることで売上拡大を実現しました。
まとめ
デジタル技術の進化とともに、企業は単なるIT導入だけではなく、ビジネス全体を見据えた変革が必要になっています。ビジネスアーキテクトは、戦略と技術の両面から企業の成長を支える重要なポジションです。
今後もDX推進が加速するなかで、ビジネスアーキテクトの需要は高まる一方と予測できます。戦略的な視点と実行力を兼ね備えたプロフェッショナルとして、キャリアアップを目指す方にも注目の職種といえるでしょう。
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