はじめに
最近、IT業界の中で静かに話題になっている動きがあります。
「某大手SIerが、履歴書の提出をやめる方針に動いている」
最初に聞いたときは「本当に?」と疑いたくなる内容ですが、
これは単なる効率化ではありません。
IT転職市場の価値基準そのものが変わり始めているサイン です。
なぜ企業は、長く“当たり前”とされてきた履歴書を手放そうとしているのでしょうか。
そして、履歴書のない採用では企業は候補者の“どこ”を見ようとしているのでしょうか。
この記事では、その裏側にある本質を深掘りします。
1. IT業界では転職エージェントを利用した転職が当たり前になっている
IT業界では、転職時にエージェントを利用するのはもはや特別なことではありません。
エンジニアを対象にした調査でも、
転職の際に転職エージェントを利用した人は約6割(62.9%)とされており、
多くのIT転職者がエージェント経由でキャリアを動かしています。
2. 履歴書が、いまのITエンジニアを映しきれなくなった
履歴書は本来、直線的なキャリアを前提につくられました。
1社目→2社目→3社目
在籍年数
役職
学歴
しかし、ITエンジニアのキャリアはそんなに単純ではありません。
副業、複業、SES、フリーランス、スタートアップ、短期プロジェクト、
業務委託、社内異動、技術領域の横断…。
ひとりのエンジニアが数年の間に担当する領域は大きく変わり、
プロジェクトごとに役割も異なります。
つまり、キャリアはもはや「線」ではなく、「面」や「立体」なのです。
にもかかわらず、履歴書では“担当フェーズの羅列”しか伝えられない。
企業側はすでに気づいています。
「履歴書では、この人の価値がわからない」
企業が履歴書を手放し始めた背景には、そんな本音があります。
3. 企業が深掘り面接にシフトした本当の理由
履歴書を捨てた企業が手にしたのは、“会話による評価”です。
面接はこれまで、
・冒頭で経歴を確認して
・最後に志望動機を聞く
という“儀式的な場”でもありました。
しかし今は違います。
面接=最初の1分から“人そのもの”を見極める場へ
完全に形を変えつつあります。
それはなぜでしょうか?
①ジョブ型採用では「再現性」がすべてになるから
現代の企業が知りたいことは、
「この人はこの会社でも成果を出せるのか?」
という一点です。
その判断に必要なのは、
・どんな課題にぶつかったのか
・どんな考え方で乗り越えたのか
・どれだけチームを巻き込めるのか
・不確実な状況でどんな判断をするのか
といった、履歴書では拾えない“人の内側”です。
面接で深掘りすることは、
再現性を見抜くための最も信頼できる方法 になったのです。
②AI時代で、“文章のきれいさ”では差がつかなくなった
いまやAIで誰でも“それっぽい”職務経歴書を作れます。
そのため、企業は文章より“本質”を見るようになりました。
・語られるストーリーの一貫性
・質問への反応速度
・思考の筋道
・曖昧な状況への向き合い方
これらはAIでは再現できず、
生の対話でしか判断できません。
だからこそ、面接はより深く、より長く、より丁寧なものへ進化しています。
③そしてもうひとつの大きな変化
「エージェント前情報」が一次評価として扱われ始めたから。
この流れもここ数年で急速に広がっています。
かつて、エージェントの役割は「推薦状を添える」程度でした。
しかし今は違います。
企業の採用担当者は、エージェントがまとめた“事前の人物情報”を、履歴書の代わりに使い始めているのです。
なぜ、ここまでエージェント前情報が重視されるようになったのでしょうか?
【1】面接のスタート地点を“深掘り”にできるから
履歴書があると、面接序盤はどうしても
「これまでの経歴を教えてください」
「どんな業務をされてきましたか?」という“準備運動”で15分ほど消えます。
しかし、エージェント前情報があれば事情が変わります。
・候補者の性格
・価値観
・本当の転職理由
・プロジェクトでの立ち回り
・強みと弱み
これらを事前に把握できるため、
企業は 最初の1分から本題に入れる のです。
結果として、面接の精度は圧倒的に上がります。
【2】曖昧で言いにくい情報を補完できるから
候補者本人が面接で言いづらい情報は数多くあります。
・プロジェクトの裏側で何があったか
・本当は何に悩んでいたか
・なぜ転職したいのか
・どのくらい現場に貢献していたか
・どんなタイプの人と相性が悪いか
エージェントは候補者と複数回の面談を行うため、
こうした“履歴書に書けない部分”を企業に伝えられます。
これは企業にとって、履歴書よりも価値があります。
【3】良いエンジニアは“待ってくれない”から
採用競争が激化する中で、企業は「いかに早く意思決定できるか」が勝敗を分けます。
履歴書を待つ→ 書類をチェックする→ 書類選考をする
この流れは、1〜2週間のロスです。
いまはその時間が致命傷になります。
だからこそ企業は、「履歴書なし × エージェント前情報 × 深掘り面接」
という高速で精度の高い採用モデルへシフトしています。
4. では、この新しい時代でエンジニアはどう備えるべきなのか?
履歴書が消えていく世界では、
あなたを評価する材料は、
“あなた自身のストーリー” に変わります。
企業が求めるストーリーとは:
・どんな課題に向き合ったか
・なぜその判断をしたのか
・どんな仲間とどんな動きをしたのか
・どんな壁があり、どう超えたのか
・そこで何を学び、次の現場にどう活かせるのか
これらの因果関係です。
つまりこれからは、
経歴ではなく“再現性”を語れる人が強いのです。
■まとめ:採用の主役は「書類」から「対話」へ
履歴書をなくす企業が増えているのは、書類選考が面倒だからではありません。
企業は、エンジニアの本質を見たいのです。
・深掘り面接で“思考の中身”を見る
・エージェント前情報で“背景のストーリー”を見る
この二つが合わさることで、
これまでの書類選考よりはるかに正確に人物を見極められます。
そしてこの動きは、
間違いなくIT転職市場全体に広がります。
“何をしたか”ではなく、“どう考えて動く人なのか”。
履歴書に頼らない採用は、
エンジニアの真価がより正しく評価される時代への入り口です。
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